市場系システム選定のポイント 前編

市場系システム選定のポイント 前編

市場系システムの選定をどのように進めるか、悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。本稿ではシステム導入の目的と機能要件及び非機能要件の観点から選定のポイントについて解説していきます。 

システム導入の目的

市場系システムの導入目的は会社、組織によって様々です。弊社ではこれまで沢山の市場系システム導入の検討に参画させていただきました。お客様からヒアリングさせていただいたものも含め、導入目的の事例をいくつかご紹介させていただきます。

<市場系システム導入の目的の例>

  • 既存システムが老朽化しているので新しくしたい
  • 既存システムの提供ベンダによるサポート停止の期限が近いため、システム更改を行いたい
  • 一部の業務がExcelやAccess等で属人化しており、業務システムとして構築したい
  • 運用中の複数システムを1つのシステムに統合して、データの一元化や業務効率化を図りたい
  • 既存システムの費用が高額であるため、システム維持のコストを抑えたい
  • 制度変更が控えているため、対応できるシステムを導入したい
  • 新規に業務を始めたいので、事務システムを整えたい
  • 勘定系システムの変更が決まったので、データ連携を含めサブシステムの機能を見直したい
  • 合併・提携先とシステムの共同化を行いたい

このようにお客様を取り巻く環境や抱えている課題に応じてシステム導入の目的も多岐に亘ります。システム検討の立ち上げ時にはまず導入目的を明確に定めておくことが重要です。

次にシステム検討を具体化していくために、現状の課題や業務の洗い出しを行うことが必要になります。洗い出した項目の優先度付を行い、最終的に選定する際に必須要件は何なのかを整理していきます。ベンダからの製品説明・ヒアリングの中で整理していく場合もあれば、RFI(情報提供依頼書)、RFP(提案依頼書)を作成してベンダ各社の提案内容を比較検討していく場合もございます。

さて、最近の市場系システムの検討においては、コスト低減や導入までの期間短縮のためパッケージシステムをベースに選定を行うことが多くなっています。パッケージシステムは国内製品・海外製品様々あり、機能レベルやサービス内容、コスト構造にそれぞれ特徴を持っています。選定プロセスの中で各社は自社パッケージの機能の充実さやコストの安さ等強みをアピールします。しかしながら、こうした目先の情報に目が行ってしまい、当初のシステム導入の目的を見失っては元も子もありません。システム導入において何を重要視するのか、何が解決できるのが一番なのか、選定の軸をはっきりさせておく必要があります。これらを念頭においた上で様々な目線で製品の検討軸について考えてみたいと思います。

業務機能に関する確認ポイント

まず初めにパッケージとして保持している機能を確認していきます。必要とする業務とパッケージ機能がマッチしているか検証を行い、選定対象のパッケージを絞り込みます。

  • どのような業種向けのパッケージか?

そもそも選定対象のパッケージがどういった業種向けに開発されているかによって、パッケージで提供される機能や想定された業務フローは大きく異なります。何故なら、パッケージシステムの多くがモデルとなるユーザのニーズありきで開発されたという歴史的な背景があるためです。具体的に言えば、セルサイド(例:証券会社)向けなのかバイサイド(例:銀行、保険会社)向けなのか、あるいは特定業種向けに開発されたものかで異なっていることが多いです。検討時にはまずはどのような業種向けのパッケージなのか、確認していきましょう。

  • どのような金融商品に対応しているか?

システム管理対象としたい金融商品とパッケージの対応範囲の確認を行います。選定対象のパッケージが有価証券に強いのかデリバティブに強いのか、仕組債やエキゾチックデリバティブといった複雑な商品のキャッシュフロー生成や時価評価にどのように対応しているかも確認のポイントとして挙げられます。またパッケージで対応していなくてもカスタマイズで対応できるのか等代替策があるのかも確認しておくのがよいでしょう。

ベンダによっては有価証券は「パッケージ製品A」、デリバティブは「パッケージ製品B」、外国為替は「パッケージC」といったように、業務範囲が複数商品にまたがる場合、パッケージを組み合わせて提案される場合もありますので、システムアーキテクチャも合わせて確認することをオススメします。

公正価値算定にあたり、システムでの評価結果を適用する場合は会計監査人とのロジックの妥当性の検証が必須となります。選定にあたってはパッケージとして計算ロジックを保持しているのか、それは自社開発なのか外製のエンジンを使用しているのか、計算ロジックの開示が出来るのか等が確認のポイントとなります。

  • 必要となる業務機能が網羅されているか?

システム化したい業務に対してパッケージ機能でどの程度カバーできるかの検証が必要となります。フロントオフィスにおけるプライシング・ポジション管理・分析・シミュレーション、バックオフィスにおける会計処理・期日管理・決済管理、ミドルオフィスにおけるVaR計算・ストレステスト等、各ユーザで要求される業務は多様です。

繰り返しになりますが、パッケージは開発に至るまでの歴史的な背景によって特化している業務領域が異なります。例えば、海外製品のパッケージの場合は多様な商品のプライシングには特化しているものの、日本基準の会計処理(例:簿価計算)に対応していないことがあります。こうしたパッケージを選択する場合、適用するベンダによるカスタマイズ開発ありきでの導入となることに注意が必要です。

  • 各種規制や市場慣行の変化に対応しているか?

2008年の9月に発生した「リーマンショック」を契機に市場系の分野においては様々な規制が設けられることとなりました。特に店頭デリバティブの分野においては、当局への取引報告制度・清算集中規制・証拠金規制が施行され、担保管理の高度化や時価評価をマルチカーブベースで行うことがスタンダードになりつつあります。また自己資本規制の分野ではバーゼルⅢ対応の一環であるSA-CCRやIRRBBへの対応も要求されています。

2021年度以降は金融商品時価会計の見直し、LIBOR公表停止、バーゼルⅢの最終化も控えており、市場系の分野では引き続き制度変更への着実な対応が求められます。これらの制度変更に対してパッケージとしてどのように対応しているか、あるいはどのような対応を予定しているか、継続的なシステム利用の観点からも極めて重要な確認ポイントとなります。

非機能要件に関する確認ポイント

業務機能のカバー範囲が確認できたら、次に非機能面を確認していきます。ユーザにとって扱いやすいシステムか、システム基盤担当者から見ても運用しやすいシステムかを検証していきます。

  • 使い勝手の良いシステムか?

システムの操作性についてはパッケージのカタログ等に表現されていることは少ないため、実際にパッケージのデモを確認することになります。基本的なメニュー構成、画面構成、入力項目、入力順等、どこに何があるか操作者にとってわかりやすいものになっているでしょうか。

また最近は金融機関様においてもペーパレス化が進んでおり、システム検討時には「従来のような伝票ベースの業務フローを変えていきたい」という声をお聞きすることが多くなりました。こうしたペーパレス化に対応できるよう、システム上の登録・承認含めた処理の一連の流れや承認の回数や操作権限制御が柔軟に行うことが出来るかも確認しておくのがよいでしょう。

  • データ検索・出力を汎用的に行うことが出来るか?

システム上に登録されたデータを活用していくために、データの検索方法と出力内容を確認しておきましょう。市場部門においては、社内向けの報告書に限らず、定期的な当局報告や法定帳簿の保管、対お客様向けレポート等様々なシーンでデータを抽出しなければなりません。パッケージ標準として報告書のフォーマットが用意されているのか、ExcelやCSV等で出力できるのか、具体的な報告ケースを想定した上で提供ベンダへ確認をしていきます。

パッケージによってはユーザ任意の項目や集計単位でデータ出力が可能なEUC機能を用意しているケースもございます。ただし、EUC機能の内容次第ではクエリ(SQL文)作成等のある程度のIT知識が要求される場合もあるので、ユーザの習熟レベルに応じて導入されるのがよいでしょう。

  • システム基盤要件について

システム稼働に必要となる基盤要件もパッケージによって様々です。ハードウェアについて、必要なサーバ台数やマシンスペックはどの程度を用意すればよいかを確認します。業務要件によっては、時価評価やVaR計算等の負荷の高い処理が必要となるため、高いスペックのサーバが必要になることもあります。また最近の案件ではシステム基盤にクラウドサービスを採用されるケースも増えております。パッケージとしての対応実績やオンプレミス型との違いや運用上の注意点等をベンダへ確認しておきましょう。

ソフトウェアについて、OSやデータベースに関するライセンスやシステム稼働前提となるミドルウェア(例:運用監視、バックアップソフトウェア)があるかどうか確認します。各ソフトウェアのベンダサポートはいつまで続くでしょうか。条件次第では次回基盤更改時期、対応内容それに基づくコスト感も変わってくるため、将来的な対応も見据えて検討していきます。

まとめ

本稿では機能要件、非機能要件を中心システム選定のポイントについて解説させていただきました。各社のパッケージは過去の開発の経緯から仕様が異なります。パッケージ仕様を踏まえ、自社のシステム導入の目的に合わせたシステムを選定していくことがとても重要となります。

弊社パッケージ「Prélude Enterprise(プレリュード エンタープライズ)」の仕様については以下に資料をまとめておりますので、フォームに必要事項を記入の上ダウンロードいただけます。

金融市場系システム Prélude Enterpriseのご紹介

 次回はシステム要件以外の切り口での検討軸について解説を予定しております。

参考文献:市場系パッケージ選定のための知識と実務(2016年9月28日 株式会社きんざい)