代替金利指標 O/N RFR複利(後決め)計算への対応

代替金利指標 O/N RFR複利(後決め)計算への対応

LIBOR公表停止に向けた対応の内、O/N RFR複利(後決め)の計算への対応は重要テーマの1つです。本稿ではO/N RFR複利(後決め)の計算にかかる事務・システムにおける課題と対応状況について記載いたします。

O/N 後決め複利計算とは?

2021年末に控えるLIBOR公表停止にかかる事務・システム対応が各社様で進んでおります。円LIBORの代替金利指標の選択肢としては、①O/N RFR複利(後決め)、②ターム物RFR(TORF)、③全銀協TIBORが選択肢として考えられておりますが、この内、①O/N RFR複利(後決め)(以下、後決め複利)については、文字通り金利決定が後決めとなるため、これまでの前決めが前提である事務フローの見直しが求められていると認識しております。

具体的には、前決めの場合は金利決定日の参照金利に基づき、次回の受払利息額が前もって確定するため、決済などの事務手続きの見通しが立ちます。一方で後決め複利の場合は、取引条件で定められる金利参照期間のRFRを日次複利計算することで求められますが、金利が確定するのが金利支払日の数営業日前となるため、前決めと比較すると金利確定から利息受払までの事務手続き期間がタイトになります。更に、この後決め複利計算においては複数のコンベンション(計算方法)が想定されます。LIBOR公表停止対応については、この後決め複利計算に如何に対応するかがポイントではないでしょうか。

複数のコンベンション・通貨・商品への対応が要求される

後決め複利のコンベンションは以下のパターンが想定されております。

  • Lockout方式・・・金利参照期間と利息計算期間は同一だが参照終了日の数営業日前に金利決定日が到来し、金利決定日から参照終了日までは金利決定日に適用される金利と同じ金利を適用して変動金利を確定する方式。
     
  • Delay方式・・・金利参照期間と利息計算期間は同一で、キャッシュフローの受払日が利息計算終了日の数営業日後に発生する方式。

  • ObservationPeriodShift(BackwardShift)方式・・・金利参照開始日/終了日が利息計算開始日/終了日より同じ営業日数(ラグ日数)だけ前にそれぞれ設定されている方式。金利を参照する際も評価基準日よりラグ日数分前の日付の金利を参照。

  • Lookback(ResetDaysPrior)方式・・・金利参照開始日/終了日が利息計算開始日/終了日より同じ営業日数(ラグ日数)だけ前にそれぞれ設定されている方式。金利を参照する際も評価基準日よりラグ日数分前の日付の金利を参照。
    ObservationPeriodShift(BackwardShift)方式と異なる点としては、参照する金利の計算期間が当該金利の計算期間ではなく、シフト前の利息計算期間の該当する期間で計算する点。

現在、LIBORを参照金利とする金融商品は貸出、債券、スワップ等多岐に亘ります。また円(TONA)だけでなく、ドル・ユーロ等の他通貨のRFR(例:SOFR、€STER)も考慮が必要となります。今後は、後決め複利を前提とした取引の事務・システム対応を進めていく必要があると認識しておりますが、今挙げたようなコンベンション・商品・通貨の組み合わせに全て網羅的に対応する場合、システム改修含めて大きな負担となります。特に貸出(例:シンジケート・ローン、外貨建て貸付)を管理する基幹系(勘定系)システムに、後決め複利の計算を新たに実装しようとすると、莫大なコスト・期間がかかるとされており、お客様からは現実的に難しいというお声も聞かれているのが現状です。

LIBOR公表停止に先駆けて対応が要求される

後決め複利計算の複雑性に加えて、LIBOR公表停止を待たずして事務・システム対応を急がなければいけない流れとなっております。2020年6月1日に金融庁・日本銀行から発出された「Dear CEOレター」の中では、RFRを参照した商品について、2021年初めにはシステムにて取扱いが可能となること、それが難しい場合は、手動で対応可能となるよう事務規定・事務フローを見直すことの旨が記載されております。

また、2020年10月23日付でISDA(国際スワップ・デリバティブズ協会)からISDA IBOR Fallback Protocol(いわゆるISDAプロトコル)が公表されたことを受け、金融機関をはじめとする市場参加者においては当該プロトコルへの批准手続きが進んでおります。効力発生日である2021年1月25日以降は、ISDAマスター契約に基づくデリバティブ取引にはフォールバック条項が導入されるため、後決め複利を前提とするスワップ取引管理が出来るよう準備をしておく必要があります。

さらに2020年11月30日付で日本円金利指標に関する検討委員会から公表されている「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議(第2回)」取りまとめ報告書記載のタイムラインによれば、2021年6月末までには後決め複利取引に対応した体制整備が必要となっております。これを受けてなのか、弊社お客様の一部からは「カウンターパーティから新規のLIBORベースの取引は行わないという通知が来た」、「6月末までに何らかのシステムの手当を行いたい」、「システム対応を可能な限り前倒ししてほしい」等の声が聞かれ始めております。

こうしたご要望にお応えするために、弊社金融市場系システムPrélude Enterprise(プレリュード エンタープライズ)もLIBOR公表停止にかかるシステム対応を急いでおります。しかしながら、LIBOR公表停止にかかる対応は後決め複利計算だけでなく多岐に亘る(例:時価評価、他システム連携、レポート出力内容)に加えて、ほぼすべてのお客様に影響する変更となること、弊社エンジニアリソースにも限りがあるため、なかなかすべてのご要望にお応えしきれていないのが現状です。

後決め複利計算が可能なツールのご提供

弊社では上記の状況を踏まえ、貸出、債券、スワップ等の取引を管理するメインシステムの本格対応を補完する目的として、後決め複利計算が可能なツール(Excelアドイン)をご提供いたします。本ツールは弊社システムを運用しているしていないに関わらずお使いいただくことが可能です。またExcelベースの簡易ツールですので、短期間・低コストで導入できることも特長となっております。

お客様は本ツール上で後決め複利取引条件(例:参照金利、コンベンション等)を当該ツール登録いただくことで、条件に基づく金利、利息額、未収未払利息を計算が可能です。先に挙げたコンベンションや各種通貨にも対応しております。計算エンジンについては、弊社パッケージシステムPrélude Enterprise LIBOR公表停止対応版と同じものを使用しております。導入の際には計算仕様等についてご説明させていただくとともに、運用開始以降もツールの使用方法に関するお問合せなどにも弊社エンジニアがサポートさせていただいます。本ツールに関する詳しい情報については、以下に資料をまとめておりますので、フォームに必要事項を記入の上申請いただければと思います。

 

資料はこちらから

後決め複利計算ツール~RFR Calculator~

 

 

まとめ:後決め複利計算の対応に様々な選択肢を

今回はLIBOR公表停止対応にかかる後決め複利計算に対応について取り上げました。後決め複利の計算は様々なコンベンションがあり事務・システム対応が複雑になることに加え、期限、コスト等の様々な制約と向き合いながら対応を進めていかなければなりません。システム対応にあたっては、メインシステムへの追加開発も手段の1つではありますが、今回ご紹介させていただいたようなツール等でメインシステムの機能を補完するという方法等様々な選択肢が考えられます。ご参考になれば幸いです。

参考: