
制度対応
迫るLIBOR公表停止。システム対応に向けた準備について
2021年末に予定されているLIBOR公表停止にかかる対応が、各社様で進んでおります。本稿では新指標金利への移行に伴う、契約管理やリスク管理、時価評価、会計処理などのシステム面へ影響とその対応について考えます。
LIBORとは
LIBORとは「London Interbank Offered Rate」の略称で、ロンドン市場での金融取引における銀行間取引金利のことです。現在、LIBORは、ICE Benchmark Administrationが、5通貨(米ドル、英ポンド、スイスフラン、ユーロ、円)について1日1度算出/公表しています。当該指標は貸出・債券・デリバティブなど幅広い金融商品の契約において利用されております。2012年の一部の金融機関によるLIBORの不正操作問題を契機に金利指標改革が進むこととなり、2017年7月、英国金融行為規制機構(FCA)のベイリー長官より2021年末までにLIBORからの移行を促す発言がなされ、業界全体にLIBOR廃止の見解が広がります。現在のところ2021年以降はLIBORが公表停止となる可能性が極めて高いとされております。
金融市場系システムへどのような影響があるか?
LIBORを参照する取引としては、主に貸出、債券、デリバティブ等が挙げられますが、その内、債券・デリバティブの管理を担う金融市場系システムは最も影響を受けるシステムの1つと言えます。システム対応が必要な内容として、以下のようなものが挙げられます。
- 代替金利指標を参照する取引への対応
- RFR複利(後決め)に基づく利息額(未収未払含)計算への対応
- ディスカウントカーブの構築を含めた時価評価方式の変更
- 既存契約の移行・フォールバックへの対応
- 代替金利指標含めたマーケットレート取得方法の見直し
- 他システム連携用のプログラムの見直し
- 内部管理用・外部報告用含めたレポート出力内容の見直し
LIBOR自体が市場取引における主要な金利指標であるが故に、業務機能への影響は多岐に亘ります。おそらくですが、ほとんどのシステムにおいてLIBORが消失することを想定した仕様にはなっていないと思われます。
Prélude Enterpriseのシステム対応
Prelude Enterprise(プレリュードエンタープライズ)のシステム対応として、以下の3つのテーマに基づき対応にあたっております。
①新指標金利への対応
②契約の移行/フォールバックへの対応
③システム運用フローの見直し
①新指標金利への対応の例としては、公示されている複数のコンベンションに基づくRFR複利(後決め)ベースの約定管理、キャッシュフロー生成、金利決定、利息額・経過利息計算、時価評価方式(ディスカウントカーブ)の変更が挙げられます。
②契約の移行/フォールバックへの対応の例としては、LIBORを参照する取引・銘柄の一括抽出、移行/フォールバック条件登録と実行機能の実装となります。また、お客様によっては新指標金利に基づく時価評価結果の試算機能、フォールバック前後の時価評価結果の比較検証が可能な環境を用意いたします。
③システム運用フローの見直しへの対応の例としては、他システムとのデータ連携の対象にLIBORを参照する取引あるいはLIBORそのものが含まれている場合、当該データ機能の改修を行っております。また、代替指標金利を新たに情報ベンダ等から取得する場合、マーケットレート取込み機能の改修を行いつつ、公表時間に応じて、イールドカーブ生成・時価評価等のバッチ処理を含めたシステム運用フローの見直しを行っております。
Prélude Enterpriseのシステム対応の詳細については、以下に資料をまとめておりますので、フォームに必要事項を記入の上申請いただければと思います。
プロジェクト状況と残される課題
弊社ではLIBOR公表停止に向けた対応について、2019年末頃からお客様と予備協議を実施しており、その結果2020年12月現在、約30社様でシステム対応が必要であることが明らかになっております。また、2021年末という期限があること、情報も日々アップデートされることも踏まえ、プロジェクトの円滑な運営を行うべく、専門のタスクフォースを組成し対応にあたっております。既にプロジェクトを開始されているお客様では、いくつか課題が挙がっております。例えば、ターム物RFRがいつどのような形で配信されるのか、VaR計算時のヒストリカルデータをどのように補間すべきか等、未決事項がいくつかあるため、システムとしての仕様を先送りしているものもございます。これについては、お客様だけでなく、NTTデータグループ内、外部の有識者等からも情報収集しながら、市場のコンセンサスを見極めつつ、システムとしての仕様を固めていきたいと考えております。
まとめ:市場の動向を見極めながら、変化に柔軟に対応
2021年末にはLIBOR公表停止の可能性が高いとされております。システム対応のために残された時間はそう長くありません。今後、市場慣行も徐々に固まってくると思われますので、弊社でも引き続きLIBOR公表停止に関する情報収集に努めてまいります。変化に柔軟に対応しながら、お客様の安定的なビジネスの継続のため、お客様と共にこの難局を乗り越えて参ります。
参考:
- 全銀協 LIBOR特設ページ:https://www.zenginkyo.or.jp/libor/
- 日本銀行 日本円金利指標に関する検討委員会:https://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/index.htm/
- 金融庁 LIBORの恒久的な公表停止に備えた対応について:https://www.fsa.go.jp/policy/libor/libor.html